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西武鉄道もダイエーも大会社かと思っていたが、

ダイエーの産業再生機構への支援要請、
総帥堤義明氏の西武鉄道グループの全役職辞任と、社会的に話題になる大きなニュースがほぼ同着で起きた。タイミングは偶然だろうが、この二つの企業グループには共通するものがある。
 時代遅れのビジネスモデル

 かつて地価上昇のうまみを享受して大いに潤った点である。ダイエーは土地を担保にした借金経営により、小売業日本一となって、百貨店、外食、ホテル、プロ野球と手を広げ、一大コングロマリットをつくり上げた。西武鉄道グループも、金利の支払いで利益を圧縮して節税をはかり、利益は土地の含み益として蓄積し、隠然たるパワーを誇った。オーナーの堤氏は一時、世界的な大富豪とはやされた。

 だが、こうしたビジネスモデルは、とうの昔に時代遅れになっていた。7月1日時点の基準地価は、ようやく大都市圏で下げ止まりの兆しが出てきたが、全国平均は13年連続して下落した。商業地はピーク時と比べて58%低下し、1977年の水準を割る状態である。

 かつての地価の上昇は、自ら手がけた開発プロジェクトの余得という側面もあるが、基本的には右肩上がりの日本経済が産んだ土地神話のお陰である。それに巧みに乗った点は、目端が利いていたとも言える。しかし今も後遺症に苦しむ副作用があった。

 本業の経営が甘くなるという問題である。土地の取引や利用法を決めるのは、最終的にはトップの判断に頼らざるを得ない。土地がらみの事業は、トップダウン型の経営になりがちだ。ダイエーも西武鉄道グループも、ワンマン経営で知られた企業である。このため顧客よりもトップの意向を重視する体質が強まり、いざ本業を強化しようとしても思うようにいかない。

 ダイエーは2001年に一回目の金融支援を受けた時から、販売力の立て直しが課題と言われ続けてきた。しかし2004年8月中間決算で明らかな通り、一向に改善していない。既存店の売上高は前年同期比5%減と、計画していた同1%減を大幅に下回った。

 不採算店を閉めたり資産を売却して借入金を減らしたりしても、肝心な売り上げが伸びなければ、いつまでたっても経営は安定しない。ダイエーではかつて、創業者の中内功氏と長男の中内潤氏の決めた方針が絶対で、いわば中央集権的な経営が長い間続いていた。

 社員の能力サビつく

 再建のために戻った高木邦夫社長は、社員の活性化に努めたが、成果はあまり上がらなかった。債務の返済が優先したので、店舗の改装に回す資金の捻出に苦労した。しかしそれ以上に問題だったのは、社員の能力がサビついていたことだ。プロ野球のホークスの優勝セールが、大事な集客手段というのだから、実力のほどは推して知るべしだ。

 堤氏がオーナーであるコクドを中心とする西武鉄道グループも今や、節税のためだといって赤字を許容できる余裕はない。中核のコクドは前3月期が前期と比べ売り上げが減り営業赤字である。コクドの完全子会社であるプリンスホテルの経営も厳しい。西武ライオンズも赤字で、一時、堤氏が球界再編に積極的に動いたのはご存じのとおりだ。

 バブル時代は、高い料金のゴルフ場にも客は来た。しかし今や、レジャー事業で成功をおさめるには、消費者を引きつける創造的な施設作りと運営が必要である。堤総帥の意向を最優先して、上意下達になれた社員には、難しい注文かもしれない。

 人間の能力が高く評価される、まともな時代になって、土地を愛したダイエーや西武鉄道グループが苦戦するのはしかたが無いのだろう。



TITLE:NET EYE プロの視点
DATE:2005/02/05 11:41
URL:http://www.nikkei.co.jp/neteye5/mori/20041018n27ai000_18.html

森 一夫 編集委員